なぜ組織が必要なのか
生産、医療、年金、福祉、教育、科学、環境にいたるまで個人と家族ではなく、組織の手にゆだねられた。社会には、組織が供給する財とサービスなしにやっていく意思も能力もない。組織が必要なのは、知識を通じて生活の資を稼ぎ、成果をあげて社会に貢献する機会が豊富に存在するのは組織だけだからである。組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネージャーの力である。一般的な書籍では、マネジメントを内から見ているのに大学生、ドラッカーのマネジメントは使命、目的、役割から入り、外から見ている。
マネージメントの3つの役割
- 自らの組織に特有の使命を果たす
- 仕事を通じて働く人たちを生かす
- 自らが社会に与える影響を処理するとともに社会の問題について貢献する
マネジメントは常に現在と未来、短期と長期を見る。
企業とは何か
企業は営利組織ではない。企業の目的の定義はただひとつしかなく顧客の創出である。市場を作るのは企業である。
企業の第一の機能はマーケティングであり、顧客は何を買いたいかを問う。第二の機能はイノベーションであり、新しい満足を生み出すことである。
顧客の創造を行うためには資源を生産的に使用する必要がある。生産性に重大な影響を与える要因は以下である。
- 知識
- 時間
- 製品の組み合わせ
- 自らの強み
- 組織構造の適切さと活動のバランス
利益とは原因ではなく結果である。
- 利益は成果の判断基準である。
- 利益は不確実性というリスクに対する保険である。
- 利益とはよりよい労働者環境を生むための原資である。
- 利益とは医療、国防、教育、オペラなど社会的なサービスと満足をもたらす原資である。
事業は何か
「何を行い、何を行わないか」「何を続け、何を止めるか」「いかなる製品、市場、技術を追求し、いかなる市場、製品、技術を無視するか」といった意思決定があらゆる階層において行われている。あらゆる組織において共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには「われわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。「われわれの事業は何か」に答えるには顧客からスタートしなければならない。顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。消費者は顧客だが、消費者だけが顧客ではない。ほとんどの事業が少なくとも二種類の顧客を持つ。「顧客はどこにいるか」「顧客は何を買うか」を問うことも重要である。
「われわれの事業は何になるか。われわれの事業のもつ性格、使命、目的に影響を与えるおそれのある環境の変化は認められるか」「それらの予想を、事業についてわれわれの定義、すなわち事業の目的、戦略、仕事のなかに現時点でいかに組み込むか」を考えなければならない。環境の変化として以下の3つを考えなければならない。
- 人口構造の変化
- 市場構造の変化
- 消費者の欲求で満たされていない欲求
新しい事業の開始と同じように重要なこととして業績に貢献しなくなったものの体系的な廃棄がある。廃棄をしないとエネルギーは昨日を防衛するために使われ、明日を作るどころか今日を開拓するために働く時間も、資源も、意欲も持ちえないことになる。
事業の定義があってはじめて目標を設定し、戦略を発展させ資源を集中し、活動を開始することができる。
事業の目標
事業の目標設定においても中心となるのはマーケティングとイノベーションである。
マーケティングの目標は下記の7つである。
- 既存の製品について
- 既存の製品の廃棄について
- 既存の市場における新製品について
- 新市場について
- 流通チャネルについて
- アフターサービスについて
- 信用供与について
目標設定は下記2つの意思決定の後でなければ設定できない。
- 集中の目標(集中すべき分野)
- 市場地位の目標
市場地位の目標については間違いが起こりやすいので注意が必要である。市場シェアが小さいと企業の存続にとって危険であるが、市場シェアが多すぎても自分たちの惰眠をむさぼり、自己満足によって失敗する。また、市場からも独占的な供給者に依存することは強い抵抗が出てくる。市場において目指すべき地位は最大ではなく最適である。
イノベーションの目標としては下記3つである。
- 製品とサービスにおけるイノベーション
- 市場におけるイノベーションと消費者の行動や価値観おけるイノベーション
- 製品を市場に持っていくまでの間におけるイノベーション
経営資源の目標は2つの側面から設定しなくてはいけない。1つは自らの需要を市場の状況との関連において検討すること。2つ目は市場の状況を自らの構造、方向、計画との関連において検討すること。それらを検討して以下3つの目標を設定しなくてはならない。
- 土地(物的資源)
- 労働(人材)
- 資本(明日のための資金)
物的資源、人材、資金の経営資源について生産性の目標を設定しなくてはならない。同時に生産性全体についての目標も設定しなくてはならない。生産性の向上は各種のバランスを取る必要があり、生産性の向上こそマネージメントの重要な仕事であり、困難な仕事である。生産性とは難しいコンセプトであるが、中心となるコンセプトである。生産性の目標がなければ方向性を失いコントロールもできなくなる。
企業にとって社会との関係は自らの存立に関わる問題である。企業は社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済が企業が有用かつ生産的な仕事をしているとみなすかぎり存続をゆるされている。マネージメントは社会ではなく、企業に対して責任をおっているために社会性の目標が必要になる。
これらの目標を設定してはじめて「どれだけの利益が必要か」について取り組むことができる。利益とは企業存続の条件であり、未来の事業を続けるための費用である。
目標設定するには以下の3つのバランスが必要である。何もかもできる組織はなく、優先順位が必要である。間違った優先順位でもないよりはましてある。
- 利益とのバランス
- 近い将来と遠い将来とのバランス
- 目標間のトレードオフ
目標実現のためには行動が必要である。目標を設定するのは知識を得るためではなく、行動するためである。目標設定は正しい成果に集中するためであり、目標検討の結果として具体的な目標、期限、計画をつくり具体的な仕事の割り当てをしなくてはならない。目標は実行に移さなければ単なる夢である。
戦略計画
未来は望むだけでは起こらない。意思決定し、行動し、リスクを冒さなければならない。そのためには戦略計画が必要であるが、戦略計画とは言えないものを知らなくてはならない。
- 戦略計画は魔法の箱や手法の束ではない。責任である。
- 戦略計画は予測ではない。真にユニークな出来事を起こすことである。
- 戦略計画は未来の意思決定に関わるものではない。「いかにしていま合理的な意思決定を行うか」である。
- 戦略計画はリスクをなくすためのものではなく、最小にするためのものでもない。現在の資源を未来に賭けリスクを冒すことである。
戦略計画とはリスクを伴う起業家的な意思決定を行い、その実行に必要な活動を体系的に組織し、それらの活動の成果を期待したものと比較測定するという連続したプロセスである。