意思決定
日本の意思決定は独特であるが、日本以外でも通用するし、効果的な意思決定の基本である。
- 何についての意思決定かに重点を置く
- 反対意見を出やすくする
- 当然の解決策よりも複数の解決策を問題にする。
- いかなる地位の誰が決定すべきかを問題にする
- 決定後の関係者への売り込みを不要にする
意思決定のアプローチ
問題を明確にする
問題の認識の違いが異なる答えをもたらす。どのような認識の仕方があるのかを明確にすることが効果的な意思決定の第一歩になる。
意見の対立を促す
意見の対立により不完全性や間違った意見に騙されるのを防げる。代案を手にできる。自分や他人の想像力を引き出せる。
意見の相違を重視する
行動すべきか否か
意思決定が必要かを検討しなければならない。何もしないのも決定である。何もしないと事態が悪化するのであれば意思決定を行われなければならない。機会についても同様である。行動によって得られるものがコストやリスクよりも大きいときは行動する。行動するかしないかいずれかにする。二股をかけたり、妥協したりしてはならない。
意思決定の実行
なんらかの行動を起こすべき者は決定の論議に責任を持たせて参画させなければならない。決定するには「この決定を知らなければならないのは誰か」「とるべき行動は何か」「それはなぜか」「行動をとるべき者が行動できるためには、その行動はいかなるものでならなければならないか」を問わなければならない。
フィードバックの仕組み
意思決定は機会的な仕事ではない。リスクを伴う仕事である。判断力に対する挑戦である。大事なのは問題への答えではなく、問題への理解である。効果的な行動をもたらすためには、ビジョン、エネルギー、資源を総動員することである。実行の成果からのフィードバックがない限り期待する成果を手に入れ続けることはできない。
- 意思決定の前提となった予測を書面をもって明らかにする
- 決定の結果について体系的にフィードバックする
- フィードバックの仕組みを決定を実行前に作り上げておく
コミュニケーション
- コミュニケーションは知覚である
- コミュニケーションは期待である
- コミュニケーションは要求である
- コミュニケーションは情報ではない
コミュニケーションは知覚である
コミュニケーションを成立させるのは受け手である。発する者はコミュニケーターではなく発するだけである。受け手がいなければ意味のない音波でしかない。コミュニケーターを成立させるには受け手の知覚範囲内か、受け手は受けとめることができるかを考える必要がある。
コミュニケーションは期待である
われわれは期待しているものだけを知覚する。受け手が期待しているものを知ることなくコミュニケーションを行うことはできない。もしくは受け手の期待を破壊し、予期せぬことが起こりつつあることを強引に認めさせるためにショックが必要であるということを知ることができる。
コミュニケーションは要求である
コミュニケーションは受け手側に何かを要求し、受け手の価値観、欲求、目的に合致するとき強力になる。合致しないときはまったく受け付けられないか抵抗される。受け手の心を転向させるコミュニケーションは受け手に全面降伏を要求する。
コミュニケーションは情報ではない
情報には人間はいないし人間的な要素もない。人間的な属性を除去するほど情報は有効となり信頼度も高まる。情報はコミュニケーションを前提とする。コミュニケーションは情報を必要としない。経験を共有することこそ完全なコミュニケーションをもたらすコミュニケーションにとって重要なのは知覚であって情報ではない。
上から下へ、下から上へ
コミュニケーションが上から下へでは「何を言いたいか」に焦点を合わせているので懸命に行ってもコミュニケーションは成立しない。コミュニケーションを成立させるのは発し手であると前提としているからである。どのように上手に話しても一方的に話したのでは話は通じない。
同様に下の者の言うことを聞いたからといって、問題の解決にはならない。部下に理解させたいことからでなく、部下が知りたがっていること、興味を持っていること、つまり知覚する用意のあることから着手しなければならない。
コミュニケーションは上の者が下の者の言うことを理解して始めて有効になると言うことは下の者にコミュニケーションの能力があって始めてコミュニケーションが有効になる。
コミュニケーションの前提となるもの
目標管理こそがコミュニケーションの前提である。部下は上司に向かい「企業もしくは自分の部門に対していかなる貢献を行うべきであると考えている」かを明らかにしなければならない。部下の考えが上司の期待どおりであることはまれであるが目標管理の最大の目的は上司と部下の知覚の仕方の違いを明らかにすることにある。同じ事実を違ったように見ていることを知ること自体がコミュニケーションである。上司の抱える問題に接すること、上司の立場の複雑さを理解し、好き好んで作り出しているものではないことを理解する。コミュニケーションを成立させるには経験の共有が不可欠である。組織においてコミュニケーションは手段てはなく、組織のあり方である。
管理
組織における管理手段には3つの特性がある。
「管理手段は純客観的でも純中立的でもない」管理のための測定を行うとき測定される対象も測定する者も変化する。測定の対象は新たな意味と新たな価値を賦与される。そのため管理に関わる根本の問題はいかに管理するかではなく、何を測定するかにある。
「管理手段は成果に焦点を合わせなければならない」活動の成果は組織の外に社会、経済、顧客に対する成果として表れる。企業の利益を生み出すのは顧客であり、内部にあるものはコストセンターにすぎない。すなわち管理的な活動の対象となっているものはコストにすぎない。
外部情報を手にするのは難しいだけでなく、その労力はきわめて大きい。価値ある外部情報を収集するためのメカニズムはまだない。効率(努力)を記録し把握することは容易である。だが、成果(外の世界に表れるもの)を記録し把握する手段はほとんどない。いかに効率的であっても馬車のムチだけをつくっている企業はつぶれる運命にある。
「管理手段は測定可能な事象だけでなく、測定不可能な事象に対しても適用しなければならない」組織の内部にありながら定量化できないものがある。優秀な人材を惹き付け引き止めることは前年度の利益よりも重要である。測定できるものはすべて過去のものである。しかも内部の事象である。外部に発生する事象において先見的に変化を測定することは不可能である。測定と定量化に成功するほど定量化したものに注目してしまうがよく管理されていると見えるほどそれだけ管理していない危険がある。
管理手段の要件は7つある。
- 管理手段は効率的でなければならない
- 管理手段は意味あるものでなければならない
- 管理手段は測定の対象に適していなければならない
- 管理手段の精度は測定の対象に適していなければならない
- 管理手段は時間間隔が測定の対象に適していなければならない
- 管理手段は単純でなければならない
- 管理手段は行動に焦点を合わせなければならない。
組織の本当の管理は一人一人の人間の姿勢と行動の誘因となるべきである。賞罰こそが組織の目的、価値観、自らの位置付けと役割を教えるものである。
経営科学
経営科学(マネジメントサイエンス)は大きな貢献を果たす道具であり、マネージャーは経営科学とは何であり、何をなしうるかを理解しておかなければならない。
経営科学が貢献を果たすためにはまず最初に対象を定義しなければならない。企業とは人から成るシステムであり、マネジメントの前提、目的、考え、間違いまで事実としなければならない。
経営科学が公準とすべきものは5つの事実が含まれる
- 企業とは社会や経済によって消滅させられる存在であり下僕である。社会的、経済的な生態システムの一員である。
- 企業とは物や考えを生み出す存在ではなく人が価値ありと認めるものを生み出す存在である。
- 企業とは金を使う。それは抽象的であると共に具体的な尺度である
- 経済活動とは現在の資源を不確かな未来(期待)に投入することである。
- 企業の内外で後戻りできない変化が常に起こっていると同時に変化の主体である。
経営科学の間違いはリスクをなくすことや最小にすることではなく、正しい種類のリスクを冒せるようにすることである。リスクを冒したときに何が起こりうるかを明らかにしなければならない。
経営科学を生産的にするための4つの期待と要求
- 仮定を検証する
- 正しい問題を明らかにする
- 答えではなく代替案を示す
- 問題に対する公式ではなくリカバリーに焦点を合わせる
経営科学の目的は診断を助けることであり、問題に対する洞察である。