学習する組織2「自己マスタリー」

スクラム

自己マスタリーは、個々のメンバーや組織全体が能力や目標を達成するために、持続的な学習と成長に焦点を当てることです
自己啓発、スキル向上、組織文化の発展を通じて、効果的なリーダーシップや高いパフォーマンスを実現し、個々のメンバー、組織とも学習を継続して成長していきましょう

自己マスタリーとは

自己マスタリーにおける「自己」とは、自己主体性と対象への主体的アプローチを指します
目標を掲げるだけではなく、それを自らのものとして捉え、自身の目指す方向や行動に結びつけることが不可欠です

「私たちは何者か」

自分が働く会社にも関わらず、都合の悪いことはすべて他人任せで、自分の役割や責任としてはまったく意識していない自分に気づいた瞬間、身震いしながらリーダーとしての覚悟を持ち始めることがあります。組織変容において、変化は同時にすべての人で起こることはまずありません。ティッピング・ポイントと呼ばれるある水準を超えると変化が加速し、組織の大半の人が変化します。

「私たちは何者か?」という問いはシンプルですが、力強いものです。デザイナーや職種、仕事内容といった表面的な答えではなく、もっと奥深くまで向き合い、「何を創り出すために仕事をしているのか」「自分は何のための存在なのか」といった自らの仕事への意味づけの仕方によって、仕事への向き合い方もその質も大きく変わります。

「私たちは何者か」の問いに答えることで、イノベーションの可能性として自分たちの本来の仕事を行う機会として捉えなおすリフレーミングができます。「前例がない、〇〇なんてできるわけがない」と言っていた人たちが「〇〇ができたら素晴らしいよね」と語り方が変わっていくこともあります。語り方が変わるとチームの動き方も変わっていきます。

「私たちは何者か」という問いに真摯に向き合うことで、人の思考はもっと奥深くに向かっていくのです。何を創り出すために仕事をしているのか、自分は何のための存在なのか。自らの仕事への意味づけの仕方によって、仕事への向きあい方もその質も大きく変わります。

ピーターセンゲは「志」には目的とビジョンの2つの側面があると述べています。目的は私たち自身の人生の目的を指し、それぞれが役割や存在意義を持っています。

・私たちはなぜ存在するのでしょうか?
・どんなに大変な状況に思えたとしても、もし私たちの存在に意味があるとしたら、それはどんな意味なのでしょうか?
・私たちは何者なのでしょうか?
・どんな存在理由を持っているのでしょうか?

一般的に、物事の意味は関係性の中で見出されます。他者との関係やその中での役割を考えることで、自分の使命や目的が明確になることがあります。家族や職場、さまざまな関係の中での役割を持ちながら、自分自身との関係性も見つめてみましょう。

自分が持つ様々な関係性と多様な役割の中で働くことの意味や、その目的意識を明確に持つことは、私たちの原動力となります。与えられた目的ではなく、自ら意味を見出し、獲得した目的の意義は極めて深いものになっていきます。

目的は方向、ビジョンは到達地

漠然と目的意識を持っているだけでは十分とは言えません。具体的な行動へ移っていくうえで、重要な役割をなすのが、ビジョンです。ビジョンとはまだ現実にはないけれど、私たちの心の中に描くことができる。未来の姿、憧憬(しょうけい)です。将来、自分や組織や社会がどのようになっていたいか、そのなりたい姿・ありたい姿がビジョンなのです。あなたは7分後、7日後、そして7年後にどのような自分でありたいですか?ビジョンはできるだけ具体的に描くのがポイントです。その情景がリアルであればあるほど自らを動かす原動力は強くなります。

具体性のないビジョンや単に現状を否定するだけのビジョンでは、変化の強力な原動力にはなりません。自分の嫌なことから逃れたいとか、問題だと思うことがなくなってほしいと考えるのがその例です。しかし、感情的に嫌であるとか頭で良くないと思っているだけの状態では、それほどエネルギーが生まれてこないものです。ビジョンの良し悪しはどれだけ自分を動かせるかによって決まると言えるでしょう。

端的に言えば目的は大まかな方向であり、ビジョンはある時点での到達目標です。別の観点では目的は「Why(なぜ)」への問いの答えであり、ビジョンは「What(なに、どんな)」の問いの答えだと言えます。この2つは両輪となることでより強力に機能します。あるビジョンを達成した時、さらに先へと導き、新しいビジョンの描き出すのは他ならぬ目的意識です

ビジョンと創造的緊張

ビジョンを具体的に描くことは重要ですが、そのビジョンと現実のギャップを認識することも同様に重要です。ビジョンはまだ現実にはない理想的な未来の姿や憧れであり、その達成には努力と行動が必要です。

ビジョンと現実のギャップは、緊張を生み出します。この緊張は、私たちの自然な欲求からくるものであり、ギャップを埋めるために行動する原動力となります。ビジョンを実現するためには、次の2つの方法があります。

  1. 行動することによる現実の変化(創造的緊張): 現実を変えるために具体的な行動を起こすことで、ビジョンに近づくことができます。計画を立て、目標に向かって着実に進んでいくことが重要です。
  2. ビジョンを現実に近づける(感情的緊張): 目標未達が繰り返し起こり、その感情的緊張に耐えられない人は徐々に目標達成の基準や目標そのものを下げてしまいがちです。それが一度ならず、何度も起こると目標はどんどん後退し、気がついたら「ゆでガエル」の童話のように顧客からも社会からもとても評価されないような基準で行動してしまう個人や組織になってしまいます。いわゆる「目標のなし崩し」です

ビジョンは私たちを駆動し、目的意識を持たせてくれます。現実とのギャップを感じつつ、ビジョンを追求することで、創造的な緊張を生み出し、行動することで現実を目標に近づけることで成長と変化を促進していきましょう。

ビジョンと行動の関係について

ビジョンは、行動することによって現実のものとなります。しかし、ビジョンを達成するために必要な行動は、現在の自分の能力を超えるものであることがあります。ここで重要なのは、能力開発です。能力は頭脳や体力だけでなく、実現のための仕組みや知識も含みます。自分のやりたいことが今できる以上のことを実現できるようになるために、能力を高める努力を続けることが大切です。

ロッククライミングをしている人を想像してみてください。崖のとっかかりに指を掛け、体を引き上げる際、指先の力だけでは体重を支えることは難しいです。足元のサポートが必要です。同様に、ビジョンを実現するためには、今できることを土台にしながら、一歩一歩近づいていくことが重要です。経験や知識、周囲の人々との関係性を活かしながら、ビジョンに向かって行動することで、手の届かないと思っていた目標にも近づけるでしょう。

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